ビーチバレーボール

第4回U19アジア選手権大会に挑んだ日本代表

第4回U19アジア選手権大会に挑んだ日本代表

若きビーチバレーボール選手たちが6月2日(木)〜5日(日)にローイエット(タイ)で開催された第4回アジアU19ビーチバレーボール選手権大会に挑んだ。3年ぶりの派遣となったアンダーエイジカテゴリーの海外遠征で選手たちはどのような成果を残したのか振り返っていく。

日本は選考会を経て決定した下記4チームがU19日本代表として出場した。

男子チーム①

黒澤孝太(くろさわ・こうた)/身長191cm/明治大1年

竜神輝季(りゅうじん・てるき)/身長178cm/駿台学園高3年

男子チーム②

宮本武士(みやもと・たけし)/身長175cm/大原学園町田校1年

美保幸輝(みほ・こうき)/身長178cm/千葉商科大付高3年

女子チーム①

和田みちか(わだ・みちか)/身長171cm/日本大1年

森 愛唯(もり・めい)/身長171cm/共栄学園高1年

女子チーム②

久岡千夏(ひさおか・ちなつ)/身長168cm/福知山成美高3年

本田安依梨(ほんだ・あいり)/身長166cm/広島市立沼田高3年

黒澤/竜神組はU19世界選手権の切符を獲得

高さと攻撃力が武器の黒澤/竜神組はプール戦を2勝1敗で通過。「スパイクの高さやショットの精度は通用しました」(竜神)、「ブロック、トスはよくできました」(黒澤)と語り、持ち味の高さを活かした。トーナメント1回戦でHood/Bergh組(AUS)にストレートで勝利し準々決勝に進出。今大会3位に入賞したSONG Jinyang/SUN Xinglong組(CHN)に敗れたものの、男子過去最高の成績となる5位タイとなり、トルコで9月に行われるFIVBビーチバレーボールU19世界選手権大会2022の切符を勝ち取った。

世界選手権の切符を獲得した黒澤/竜神組

大会を終えて世界で戦うために必要なことを聞かれると「サイドアウトを1本で切るためにサーブレシーブの安定、高い精度が必須」(竜神)、「高さと基礎力。アジアには自分よりも高い人ばかりで、もっと高さを出していかないと通用しません。そしてアジアでベスト4以上のチームを見ると、基礎的なプレーのミスがほとんどありませんでした。基礎力をつけてミスを減らしたいです」(黒澤)と語り、国内だけでは経験できない課題を持つことができたようだった。

武器を活かし、経験を積んだ各チーム

サーブとレシーブが持ち味の宮本/美保組はプール戦を1勝2敗で突破。宮本は「サーブとレシーブは海外でも通用しました」と語るように持ち味を発揮。美保は「高いブロックに対してのラインショットが決まりました」と、海外勢の高さに技術で対抗したが、トーナメント1回戦でSONG Jinyang/SUN Xinglong組(CHN)に敗れ、9位タイで大会を終えた。今後の課題や必要な技術として「世界で戦うためには、高いブロックをかわす技術など攻撃の多さが必要です。またトスの精度が課題だと感じたので、日ごろからていねいにやることを意識したいです」と宮本は語った。

通用した部分を感じつつ課題も多く得た宮本/美保組

打ち切るスパイク、ブロックと連携したディフェンスを武器に挑んだのは和田/森組。3学年歳の離れたチームだったため、初めはコミュニケーションについて難しさもあったようだが、試合が進むにつれて改善。プール戦最終戦となったFejes/Dodd組(AUS)との試合ではフルセットに持ち込み健闘を見せたが、結果は1勝3敗、13位タイで大会を終えた。「相手の高いブロックの上を抜くラインショットは通用した」(和田)が、そこに「繋げるためのディグ、正確なトスに課題がありました」(森)と振り返った。

ともに身長170cmオーバーの和田/森組

久岡/本田組もプール戦を1勝3敗で終えて13位タイだった。「セットとサーブ」(久岡)、「強打」(本田)がそれぞれ通用したと振り返り、プール戦初戦のVesty/Holdem組(NZL)との試合はフルセットのジュースにもつれる展開で、勝利まであと一歩だった。大会直前合宿中、チームを組んで日数が浅いため、コミュニケーション不足による壁にぶつかっていたが、大会を通じて互いに「相手のことを考え、リスペクトしてプレーをする」ことに取り組むことで最後には「ペアを組んでよかった」と、お互いに語るほどになった。

同学年でチームを組んだ久岡/本田組

強化スタッフから見たアジア選手権での経験

選手たちにとってさまざまな経験を積む大会となったが、強化スタッフから見た今大会はどういったものだったのか。強化スタッフに就任して初めての国際大会となった、U19日本代表スタッフの白鳥歩氏に聞いた。

「アジア各国の試合を見ていると、今大会で入賞したタイ、中国、イランなどの強豪国が“シニアと同じ戦い方”をしていました。粗さはありますが、チームの作り方をはじめ、ボールの打ち方、上げ方はシニアと同じようにプレーしていました。このまま成長すれば、シニアで戦うために必要な技術や戦い方を身につけられる仕組みになっています。コーチによって戦術やスタイルは異なりますが、上記の国ではシニアを見据えた強化が実施されていることが分かり、強化スタッフとしてよい発見ができました」

男女ともにタイのペアが優勝

2021年に行われた前回大会は、開催されたものの新型コロナウイルスの影響を考慮し、派遣を見送っていた日本。白鳥氏にとっても、海外のアンダーエイジカテゴリーの現状を肌で感じる機会になった。

「今大会は、選手たちがアスリートとして必要な知識を学ぶ場になったと感じています。例えば大会中に、こういった場面がありました。試合前日、朝8時から練習を始める予定だったのですが、選手たちは朝食を7時に食べて集合しました。練習後、翌日の朝食の時間をあえて選手たちで相談して決めるように伝えたところ、再度朝7時に設定しました。そこで栄養補給に関するデータを元に作成した資料を見せて、『食事をして体を動かす栄養を吸収するには、3時間が必要。つまり体を動かし始める3時間前には食べ終わっていないといけない』ということを学んでもらいました。食事をはじめ、飛行機での移動、現地の気候にも対応した上でプレーする準備を整えるためには、知識をきちんと身につけること、自分を知ることがとても重要です」

選手たちにとっては、経験豊富な日本代表スタッフから、アスリートに必要な生きた知識を伝えてもらう場にもなった。ここで得た知識を帰国後にも選手たちが実践し、チームに共有することで、ジュニア強化の底上げにも繋がることだろう。強化スタッフにとっても、今回得られたノウハウを受け継いでいくことで、継続性を持った強化が可能となる。

「U19のカテゴリーは、スタッフがベンチに入れる特別なルールなので、コーチのトレーニング、スキルアップも必須です。またベンチに入るのは試合に勝たせるためなのか、試合を通して効率のよい成長を促すためなのか。それによってアプローチが変わるため、目的をはっきりする必要もあると思います」

U19ではスタッフのベンチ入りが認められている

今大会で男子は過去最高となる5位タイの成績を残し、世界選手権の切符を獲得することができた。また選手、スタッフともに、さまざまな経験やノウハウ、海外の現状についての知識を持ち帰ってきた。ただ今後、そのせっかく持ち帰ったものを強化に繋ぐことができなければ、男女ベスト8に3チームずつ勝ち上がったタイをはじめとする強豪国に追いつくことは難しい。まだまだ、止まることなく進む必要がある。