アジア選手権を通して見る日本の現在地
東京2020オリンピック後、初のアジアでの国際大会だった「ビーチバレーボールアジア選手権」(11月23日~27日、タイ・プーケット)で女子日本代表の石井美樹(湘南ベルマーレ)/溝江明香(トヨタ自動車)組が銀メダルを獲得。2024年のパリオリンピックに向けて各国の強化がスタートするなかで、日本の現在地を示す大会となった。
プーケットで開催された国際大会は3大会あった。この「アジア選手権」と「U19世界選手権」(12月3日〜12月8日)、「U21世界選手権」(12月14日~19日)だ。
日本は新型コロナウイルスの影響によりU19・U21アジア選手権への選手派遣を見送っておりU19・U21世界選手権への出場権を獲得できていなかったが、アジアの中には同大会への出場を見据えてチームを編成した国もあった。こういった背景において、今大会で得られた収穫や浮上した課題とは何だったのか。今年10月に、新たに日本バレーボール協会ビーチバレーボール強化委員長に就任した牛尾正和氏の談話を交えて振り返る。
可能性を感じさせた女子
東京2020オリンピックで銀メダルを獲得したオーストラリアや強豪の中国、バヌアツが不在のなか、日本からは石井/溝江組、長谷川暁子(NTTコムウェア)/坂口由里香(大樹グループ)組、西堀健実(トヨタ自動車)/柴麻美(帝国データバンク)組の3チームが出場した。
結果は準々決勝で石井/溝江組と西堀/柴組が対戦し、石井/溝江組が勝利して準決勝へ。長谷川/坂口組は準々決勝でオーストラリアのBell/Johnson組に敗れ、西堀/柴組と長谷川/坂口組は5位タイに終わった。石井/溝江組は準決勝でニュージーランドのPolley/Zeimann組に2-1で勝利、決勝ではタイのNaraphornrapat/Worapeerachayakorn組に0-2で敗れ、準優勝だった。
銀メダルを獲得した石井/溝江組
今回優勝したタイや3位に入ったオーストラリアは両チームともに180cmを優に超える選手のいる大型チーム。日本勢はその高さに対し、戦術を重視したサーブ、テンポに変化をつけた攻撃を軸に応戦した。現地で大会を視察していた牛尾強化委員長は、「今大会では敗れたものの、女子は3チームともに今後さらに伸びる可能性があると感じた」と振り返った。
特に石井/溝江組は、ペアを組んだばかりの大会であったが、東京2020オリンピックを経験した望月剛コーチのもと、チームとしてまとまっていたと言う。
「決勝では、積極的に身長190cmのWorapeerachayakornを狙いサーブで攻めていったが、タイはサーブレシーブが崩れても2本目で修正してよく攻撃を決めていた。石井/溝江組のサーブは、狙いを変えるなどの状況判断が必要だったと思う。そこは反省点としてあげられるが、もともと石井は正確かつスピードのあるサーブが打てる選手であり、溝江も戦術にはめようとばかりせずしっかりボールを叩いていけば、スピードがあって重いサーブが打てる選手。海外で試合を積み重ねることで、それぞれのサーブ能力とオフェンス力をさらに追求していけば、強いチームになるという印象を受けた」と語った。
また、上背のない日本チームが武器とするアップテンポのコンビネーションバレーをモットーとする長谷川/坂口組と西堀/柴組に関しても、及第点を与えた。
「国内ではある程度、対応されている部分は見受けられるが、海外のチームに対しては有効だと感じた。さらに精度が上がれば、より相手のディフェンスを翻弄できるだろう。ただし、海外チームにサーブで攻められた時、その形を持続できるかが今後の課題。それを踏まえて2チームともにパフォーマンスを向上していってほしい」と、牛尾強化委員長は手応えと期待を述べた。
長谷川/坂口組はアップテンポのコンビネーションバレーをどのように発展していくか
石井/溝江組との日本人対決に惜しくも敗れた西堀/柴組
データを元に方向性の再考が求められる男子
男子は長谷川徳海(愛媛県競技力向上対策本部)/土屋宝士(恵比寿丸)組、髙橋巧(ANAあきんど)/村上斉(ADI.G)組、白鳥勝浩(トヨタ自動車)/池田隼平(カブト)組の3チームがエントリーした。 しかし、各チームとも継続的に同じチームで今後の国際大会に臨む訳ではないため、チーム強化を見据えてというよりも、個々のポイント加算目的での出場だった。
ジャパンツアーでもチームを組んだ長谷川/土屋組
今回は東京2020オリンピックでアジア勢初の表彰台に上ったカタール、コンチネンタルカップの優勝メンバーもそろうオーストラリアが参戦。大会全体を通じてレベルの高さが際立ち、日本勢は長谷川/土屋組と白鳥/池田組が9位タイ、髙橋/村上組は17位タイという結果に終わった。
優勝したMcHugh/Burnettに敗れた白鳥/池田組
中でも、今回準決勝でカタールを破り、優勝したオーストラリアのBurnettや、イランのAbolhassan(準優勝)、S.Shekar(5位タイ)ら、アンダーエイジカテゴリーの国際大会で成績を残してきた選手たちの成長ぶりは際立っていた。底上げをしっかりと図り、シニアの舞台でも結果を残し始めている。
日本勢を苦しめたのは、今に始まったことではないが諸外国の「高さ」である。しかも「高さ」を備えているカタールやオーストラリアでさえも、それだけに頼るのではなく、大型の相手ブロッカーを警戒して攻撃のテンポに変化をつけることが世界の潮流となっている。
長谷川/土屋組をはじめ日本勢も真っ向勝負ではなく、コンビネーションの中でアップテンポの攻撃を織り交ぜていったが、十分な効果は見られなかった。この点について牛尾強化委員長はこうにらむ。
「日本の男子においては、オーソドックスな攻撃と変化をつけた攻撃、どちらも決定率はそう変わらないと感じる部分があった。今後はどちらの方向性を重視することが効果的なのか、データ分析を活用して見極めていく必要があると思う。いずれにしても、世界の強いサーブやプレーのスピードに慣れていくために、練習方法や環境をもっと工夫しないと追いつかないことを痛感した。できることから取り組んでいきたい」と、課題を示唆した。
17位タイで大会を終えた髙橋/村上組
パリオリンピックに向けた当面の目標は、1年後のアジアコンチネンタルカップ第1フェーズの突破。さらに並行してアンダーエイジカテゴリーの底上げも急務である。アジアの頂点に立つために、日本チームの新たな挑戦が始まる。
東京2020オリンピックで銀メダルを獲得したオーストラリアや強豪の中国、バヌアツが不在のなか、日本からは石井/溝江組、長谷川暁子(NTTコムウェア)/坂口由里香(大樹グループ)組、西堀健実(トヨタ自動車)/柴麻美(帝国データバンク)組の3チームが出場した。
結果は準々決勝で石井/溝江組と西堀/柴組が対戦し、石井/溝江組が勝利して準決勝へ。長谷川/坂口組は準々決勝でオーストラリアのBell/Johnson組に敗れ、西堀/柴組と長谷川/坂口組は5位タイに終わった。石井/溝江組は準決勝でニュージーランドのPolley/Zeimann組に2-1で勝利、決勝ではタイのNaraphornrapat/Worapeerachayakorn組に0-2で敗れ、準優勝だった。
銀メダルを獲得した石井/溝江組
今回優勝したタイや3位に入ったオーストラリアは両チームともに180cmを優に超える選手のいる大型チーム。日本勢はその高さに対し、戦術を重視したサーブ、テンポに変化をつけた攻撃を軸に応戦した。現地で大会を視察していた牛尾強化委員長は、「今大会では敗れたものの、女子は3チームともに今後さらに伸びる可能性があると感じた」と振り返った。
特に石井/溝江組は、ペアを組んだばかりの大会であったが、東京2020オリンピックを経験した望月剛コーチのもと、チームとしてまとまっていたと言う。
「決勝では、積極的に身長190cmのWorapeerachayakornを狙いサーブで攻めていったが、タイはサーブレシーブが崩れても2本目で修正してよく攻撃を決めていた。石井/溝江組のサーブは、狙いを変えるなどの状況判断が必要だったと思う。そこは反省点としてあげられるが、もともと石井は正確かつスピードのあるサーブが打てる選手であり、溝江も戦術にはめようとばかりせずしっかりボールを叩いていけば、スピードがあって重いサーブが打てる選手。海外で試合を積み重ねることで、それぞれのサーブ能力とオフェンス力をさらに追求していけば、強いチームになるという印象を受けた」と語った。
また、上背のない日本チームが武器とするアップテンポのコンビネーションバレーをモットーとする長谷川/坂口組と西堀/柴組に関しても、及第点を与えた。
「国内ではある程度、対応されている部分は見受けられるが、海外のチームに対しては有効だと感じた。さらに精度が上がれば、より相手のディフェンスを翻弄できるだろう。ただし、海外チームにサーブで攻められた時、その形を持続できるかが今後の課題。それを踏まえて2チームともにパフォーマンスを向上していってほしい」と、牛尾強化委員長は手応えと期待を述べた。
長谷川/坂口組はアップテンポのコンビネーションバレーをどのように発展していくか
石井/溝江組との日本人対決に惜しくも敗れた西堀/柴組
男子は長谷川徳海(愛媛県競技力向上対策本部)/土屋宝士(恵比寿丸)組、髙橋巧(ANAあきんど)/村上斉(ADI.G)組、白鳥勝浩(トヨタ自動車)/池田隼平(カブト)組の3チームがエントリーした。 しかし、各チームとも継続的に同じチームで今後の国際大会に臨む訳ではないため、チーム強化を見据えてというよりも、個々のポイント加算目的での出場だった。
ジャパンツアーでもチームを組んだ長谷川/土屋組
今回は東京2020オリンピックでアジア勢初の表彰台に上ったカタール、コンチネンタルカップの優勝メンバーもそろうオーストラリアが参戦。大会全体を通じてレベルの高さが際立ち、日本勢は長谷川/土屋組と白鳥/池田組が9位タイ、髙橋/村上組は17位タイという結果に終わった。
優勝したMcHugh/Burnettに敗れた白鳥/池田組
中でも、今回準決勝でカタールを破り、優勝したオーストラリアのBurnettや、イランのAbolhassan(準優勝)、S.Shekar(5位タイ)ら、アンダーエイジカテゴリーの国際大会で成績を残してきた選手たちの成長ぶりは際立っていた。底上げをしっかりと図り、シニアの舞台でも結果を残し始めている。
日本勢を苦しめたのは、今に始まったことではないが諸外国の「高さ」である。しかも「高さ」を備えているカタールやオーストラリアでさえも、それだけに頼るのではなく、大型の相手ブロッカーを警戒して攻撃のテンポに変化をつけることが世界の潮流となっている。
長谷川/土屋組をはじめ日本勢も真っ向勝負ではなく、コンビネーションの中でアップテンポの攻撃を織り交ぜていったが、十分な効果は見られなかった。この点について牛尾強化委員長はこうにらむ。
「日本の男子においては、オーソドックスな攻撃と変化をつけた攻撃、どちらも決定率はそう変わらないと感じる部分があった。今後はどちらの方向性を重視することが効果的なのか、データ分析を活用して見極めていく必要があると思う。いずれにしても、世界の強いサーブやプレーのスピードに慣れていくために、練習方法や環境をもっと工夫しないと追いつかないことを痛感した。できることから取り組んでいきたい」と、課題を示唆した。
17位タイで大会を終えた髙橋/村上組
パリオリンピックに向けた当面の目標は、1年後のアジアコンチネンタルカップ第1フェーズの突破。さらに並行してアンダーエイジカテゴリーの底上げも急務である。アジアの頂点に立つために、日本チームの新たな挑戦が始まる。