PLAYERS INTERVIEW⑥ 坂口由里香
「憧れが現実になった」と語る2019シーズンは、坂口由里香にとって躍進の年となった。ワールドツアー1-star、2-star大会でコンスタントに表彰台に乗り、2020年の初戦となった2-starでも表彰台をキープ。国内でも女王として君臨する石井美樹/村上めぐみ組から白星をあげるなど若手の台頭としても注目されている。さらに上のステージへ挑むため、勝負への意気込みを聞いた。
──2019シーズンを振り返って手ごたえを感じた部分はありますか。
「昨シーズンを通じて、『ビーチバレーボールの選手』としての在り方が変わってきたような気がします。結果ももちろんですが、ワールドツアーに出られるようになって世界観も変わり、考え方も変わってきました。やっとちょっと土台ができたかなという感じです」
──具体的にどのような感じで世界が変わったのですか?
「最初は1-starの大会に出られるのはありがたいと思っていたんです。でも、だんだん1-starは優勝しないとまずい。そこで優勝しないとその次はない。2-starも表彰台には絶対に乗りたい。3-starは出場して上位を目指す、と段階を踏んで自分の気持ちが変わっていきました。ただ単に大会に出て数をこなしているという感じではなく、一つ一つの大会にフォーカスしてて目標もクリアしてきました。それまでは『とにかく試合に出られたらいいな』と思っていたんですけど、今は『この大会は絶対勝ちに行きたい』と思うし、毎大会の目標も明確なのでそこでよかったか悪かったかと判断もできるようになりました」
──国内においても、階段を駆け上がっていきましたね。2017シーズンはケガに泣きましたが、2018シーズンはビーチバレージャパンなどで初のベスト4入り、2019シーズンではツアー(都城)やファイナル大会で決勝進出を経験されました。
「そうですね。2017シーズンはケガをしていたので、まだ出たことのないファイナル大会を一目見ようと大阪に行きました。コートの外から先輩たちの試合を見ていました。そして昨シーズンはようやく出場権を手にすることができたので、本当にうれしかったです。パートナーの(鈴木)千代さんはファイナル大会の常連なので、冷静でしたが(笑)。決勝で負けてしまったけれど、あそこの舞台で試合ができたのも、またひとつ自分の中の大切な経験となりました。憧れが現実になったので」
ブロック練習に入念に取り組む
──ステップアップできた要因。ご自分では何だと考えていますか。
「何でしょうね(笑)。考えることが増えたかもしれません。以前は、勘に頼る部分があって、点が決まったらラッキーという部分も多かった。でも、千代さんと組むようになって2人とも背が低い分、頭脳で戦わないといけないことを教わりました。練習や試合で今まではそこまで考えることなかった。最近は作戦だったり相手のはめ方だったり、引き出しが増えて、その分、試合や練習試合で頭をフル回転させて考えるようになりました。勝てたときはそれが楽しいと思うようになりました。あと私は、これまで組んだパートナー、会社、チームに恵まれているなと思います。強力な後押しをしてもらっているので、その中でチャンスをいかすことができました。もちろん、プレッシャーを感じたりすることもあるんですけど…」
──大舞台で力を発揮できる姿を見ていると、坂口選手はプレッシャーに強いほうではないですか?
「……ですかね? でも、試合中とか、狙われ過ぎて心配になって『もうやだ』って涙が出るときもあるんですよ(笑)。私のほうが戦闘能力は低いので。でもそこは千代さんのカバー能力が高いから、私が困ったときはいつも助けてくれます。だから、千代さんにボールが集まったときの私のカバー能力だったり、ツー攻撃の能力だったり、そこを高めていかないといけない。最近はサイドアウトのとき、相手のサーブが散らばるので、そこが今シーズンのチームの課題と言えますね。昨シーズンを踏まえると今シーズンは大事な1年になります」
──考え方に影響を受けた選手はいますか?
「オーイングにいたときはシン(村上めぐみ)さん、エリカ(幅口絵里香)さんにサポートしてもらってよく話を聞いてもらっていました。今は千代さんですね。結構、会話をしていると思います。これからも自分の意見を伝えることは、続けていきたいですね。千代さんは一見、クールに見えるけど、とても熱い人なんですよ。試合中にお互いワーッとなることも、なくはないんですけど、感情に左右されそうになったら、そこは自分次第だと思っています。『自分がんばれ』って目の前の1点に集中します。他のことは気にしていられないですから。その中でパートナーと会話をすることを心がけています」
──ゲームメイクはどちらがやっているのですか?
「基本は千代さんがやってくれます。でも、私のほうがディフェンス面で後ろにいることが多いので客観的に見えることも多い。途中でこうしたほうがいい、と思うことは言うこともあります」
自身の課題は高さ対策
──先ほども練習を見させてもらいましたが、課題になってくるのは、大きいブロッカーの対策でしょうか。
「そこですね。そこと向き合うのがとても難しい。逃げられないテーマですね。練習では自分たちが大型のブロッカーに対して攻撃を決められるか。さらに向こうからのブレイクを防いで攻撃で切り返して、その後ブロックで仕留めるという練習をしているんですけど、男子選手のブロッカーの方に協力してもらっています。やっぱり攻撃するときは怖いですね」
──得意の速いコンビネーションが武器になると思いますが、試合ではどんなときにうまくいかなくなるのでしょうか。
「自分たちがちょっと疲れているとか、ディフェンスはできても攻撃力までいかないとか。そういう時に失点されてブロックされる。そうすると意識してブロックが見えるので、それで交わしにいくと相手にはめられる。避けようとすると攻撃をはたかれたり、その先にレシーバーが待っていたりする。それだと後手になってしまうんです。そこを怖がらずに突破していかないと先手をとれない。仮に決まらなくても次につながると思うので。昨シーズンは終盤でそれに気づいて試す前にシーズンが終わってしまったので、今シーズンのワールドツアーで挑戦していきたいと思っています」
──憧れている世界のプレーヤーはいますか?
「ずっとカナダのメリッサ(ヒューマナ・パレデス)さんが好きだったんですけど、今は同じくカナダのヘザー(バンズリ)さん。私より少し身長が高いんですけど、世界の中では低いほうですよね。それでもすごく上手で可愛くてかっこよくて。最近よくインスタみています(笑)。ワールドツアーで一緒だったら試合もずっと見てしまいます。チームの雰囲気も『イエイ!』という感じで明るくて好きなんです!」
──最後に2020シーズンに向けて目標をお願いいたします。
「戦いまで時間もなくなってきました。今思うのは、『ああしておけばよかった』ということがないように勝負に挑みたい。もちろん、結果がよかった、悪かったはあると思うんですけど、大切なのはその過程ですよね。後悔はなかったときっぱり言えるくらいやれることをやって準備して臨みたいです。あとは、今シーズンのワールドツアー3-starでメダルを持って帰りたいと思います!」
練習後のブレイクタイム
撮影/平野敬久