PLAYERS INTERVIEW⑤ 二見 梓
インドアからビーチバレーボールに転向して2019年で3シーズン目を迎えた二見梓。1シーズン目から存在感を発揮し代表入りを果たし、2シーズン目はイタリアを拠点に活動し世界の洗礼を受けた。新たに環境を整えて心機一転、迎えた2019シーズンは、東京オリンピックを見据えて前進してきた二見にとって勝負のシーズンとなる。
──国内シーズンが5月の「JBV品川オープン2019」を皮切りに幕を開けました。二見選手にとって今シーズンは、新体制でのスタートになりますね。
二見:3月に新しいチームとしてスタートしました。元日本代表男子監督の平野将弘さんにコーチをしていただいています。それから、東レアローズにいたときに見てもらっていたトレーナーさんにも来てもらいました。
──コーチングスタッフを変えた理由は何ですか?
二見:以前はイタリア人コーチだったのですが、負けが続くとコミュニケーションがちぐはぐになることがあったんです。そこで、お互いが納得した上で契約を終え、新しいコーチを自分たちで探すことにしました。私たちは昨シーズンまでとにかく試合を重ね、世界で経験を積んできました。そこから、もう一つ戻って、パスやトスの丁寧な部分、繊細な部分を見つめ直そうと思ったんです。そう考えると、日本人は技術が繊細で、何より言葉が通じる。そうした経緯から、平野さんにお願いすることにしました。
──海外で試合を重ねたことで、日本では得られないこともありましたか?
二見:たくさんあります。イタリアを拠点に練習している時は、常に高いブロックが飛んできました。それが普通のことで、高さやパワーをいつも意識できる環境でした。それはずっと海外にいた強みだと思います。
国内初戦の「品川カップ」で優勝した二見/長谷川組
──新体制がスタートして2ヵ月になりますが、現時点での課題は?
二見:サーブレシーブとサーブ、ブロック…、全部です(笑)。全部なんですけど、今シーズンはひとつひとつのプレーにフォーカスして取り組んでいます。チームというよりも個人。細かい技術から見直しています。
──二見選手の持ち味といえば、高さのあるブロックです。ブロックで変えたことはありますか?
二見:考え方も変えたし、ブロックだけでなくフェイクも織り交ぜて考えるようになりました。インドアの時は横に基準を取ってくれる選手がいたので、そこに早くぶつかって跳ぶという感じだったんです。でも今は、相手に対しての基準がある。後ろの選手に拾ってもらうブロックもあります。
──理想的なブロックは見えてきましたか?
二見:理想的な選手の真似をしています。ドイツのJulia Sudeという選手なんですが、私と同じくらいの身長ですごく上手い。とにかくブロックの位置取りやタイミングがいいんです。他の細かい技術もレベルが高くて、高さがないことが言い訳にならないくらいの技術を持っている。私もそうなりたいと思っています。
──他に変えたことは?
二見:最近、サーブを変えました。普通のフローターサーブから、トスを高く上げてボールを叩くようサーブにしたんです。それまではサーブが得意なイメージはなかったけど、変えたことで自信を持てるようになってきました。このサーブを、例えば3-starのメインドロー、あるいはファイナルなど「ここで1点が欲しい」という場面で使えるようになりたいですね。それができて初めて自分のものになったと言える気がします。
──どうやって自信をつけたのでしょう?
二見:最初はとにかく練習しました。決められた期限までに1000本打って、どれくらい上達したかを自分で点数にするんです。しかも、息が上がっていたり、緊張していたり、どんな状況でもコンスタントに打てるようにする。そういうことを、練習の中から意識してやっています。
──意図的に心拍数を上げるのですか?
二見:そうです。例えば、きつい練習をした後に、コーチから「はい、サーブ」と言われます。休みたくても、「はい、サーブを打ってから休む」と(笑)。ハーハー言いながら、でも、置かれた的を狙って打つ。はじめはネットに引っかけたり、まともに的に入りませんでした。それが最近は、コンスタントに的に入るようになってきた。自信がついてきましたね。
国内屈指の高さを持つ二見
──東京オリンピックが近づいてきた実感はありますか?
二見:日数的にはどんどん近づいていますからね。少し前までは、正直、焦ることもありました。でも、今は自分たちの技術が確実に上がっているという実感があるんです。ちゃんと力がついていれば、自ずと結果もついてくる。だから、今はそんなに焦りもありません。
──プレッシャーは?
二見:ないです。でも、オリンピックに出たいという自分の思いが強すぎて…(笑)、たまに空回りすることがあります。
──今シーズン、どんな1年にしたいですか?
二見:東京オリンピックの1年前なので、最後の年を迎えるまでに自分が課題としていることをすべてクリアにしたいと思っています。いろいろなことでやり残しがないようにしたいですね。
──悔いのないように、ということですね。
二見:やりたいこと、やらなきゃいけないことを書き出して、クリアしたら消していくようにしているんです。全部をクリアするのは難しいかもしれないけど、できた分だけ自信になりますから。そういうことをしながら世界と戦って、オリンピックに出場するためのポイントを稼いでいきたいと思います。
撮影/平野敬久