ビーチバレーボール

PLAYERS INTERVIEW② 石島 雄介

PLAYERS INTERVIEW②

石島 雄介

2018シーズン、堂々のランキング1位となった石島雄介(トヨタ自動車)。日本代表としてワールドツアーで初めてのメダルを獲得(1starバンコク大会)、ジャパンツアーでも4勝をあげ、ブロッカーとして存在感を発揮した。ビーチのイロハを経験した石島の2シーズン目を振り返り、目指すものを聞いた。

ベースを作った2シーズン目

──今シーズンは転向して2シーズン目となりますが、オフシーズンを含めて通しで経験した初めてのシーズンでした。振り返ってみてどんなシーズンでしたか?
石島:1年目のシーズンはなかなか試合で勝つことができなくて、2年目は日本ランキング1位の高橋(巧)選手と組みました。彼から勝ち方を教わりながら、しっかりと自分自身の結果もついてきたので、そういう部分はすごくよかったと思います。

──「ジャパンビーチバレーボールツアー」はトータルで4勝。シーズンの出だしは、非常に動きもよく、オフシーズンのトレーニングの手応えを感じているように見えました。しかし、7月以降はなかなか結果を出せず、維持は難しかったのでしょうか。
石島:そうですね。7月、8月は自分のパフォーマンスが落ちてしまって、難しかったです。原因として考えられるのは、ワールドツアーと国内ツアーを休まずに出続けてしまった。すべてが初めての経験で、コンディションの調整ができませんでした。「ここで勝たなければいけない」という大会で、パフォーマンスを出しきれなかったというのがもったいなかったと思います

──勝つことができなかったのは、身体的な問題? それともプレッシャーなどメンタル的な問題ですか?
石島:両方あると思いますね。コンディション的には7月終わり、8月頭にピークをもってくるのが、すごく難しくて。自分たちに絶対的な力があるなら、それも乗り越えられたと思うんですけど、盤石なところまで持っていけなかった部分もありました。


新パートナー・上場雄也とともに

──今シーズンは、ブラジル人スタッフのもとで活動してきましたが、手ごたえはありましたか?
石島:前半の1月、2月は、ブラジルに滞在してビーチバレーボールの動きのベースを作ることができました。そこがよかったと思います。

──ベースというのは、たとえばどんなことですか?
石島:バレーボールでいえば、中学生が教えてもらうようなパスを含めたボールを扱うプレーです。日本だと、「風が吹いていたら、風に向かってボールを押してパスをする。その場合、風が吹いてくる方向に身体を正対しなくてもいい」と表現することが多いのですが、初心者からするとその表現が漠然としてよくわかりませんでした。どうやったら自分に合う動きが見つかるのか、手探り状態でした。ブラジルのコーチはパスひとつにしても「風に対しておへそを向け、足はボールを出す方向へ持っていく」「どんな状況でもボールの下に入って、風におへそを向ける」とより具体的に教えてくれて、自分の中で答えが見つかる。いろいろ迷うよりも、よりシンプルに考えていくことも大切だと思いました。

──今シーズンでご自身に合った基本の型は見つかったのでしょうか?
石島:はい、少しずつ、ですね。教えてもらった2ヵ月後、3ヵ月後になんとなく自分の中でこういうふうにやってみたらいいのかなとふと思って、しっくりくることがあるんです。ブラジルのコーチが教えてくれたベースに自分でアレンジしてプラスしていくイメージですね。

ディグは半端なかった

──2年目のシーズンもいろいろ吸収されましたね。さて、3シーズン目はペアを変えられての始動となりました。高橋選手とペアを解散した経緯は?
石島:今シーズンある程度、ベースを作りましたし、当然次のシーズンに入っていきやすい状態だったと思います。それでも解散に至ったのは、いろいろなことを考えての決断でした。ひとつは皆、選手は東京オリンピックを目標に掲げている中で、自分自身もその舞台で勝つことを目標にしています。そのためには次のシーズンには2star、3starでメダルを獲得したいですし、そこに向かっていくための手段、方法を考えた時に必要とするコーチや練習環境を考えた時にお互いそのカタチが違った。目指すべくステージに上がる手段というのは、人それぞれだし、チカラを発揮する方法も違います。それで新しい道にそれぞれ進むことになりました。

──11月頃からすでに新パートナーの上場雄也選手と活動されています。新しいペアはどのように決まったんですか?
石島:上場のポテンシャル、ビーチバレーボールに対しての熱意は、誰が見ても高いですよね。彼も彼で悩んでいて、僕を「パートナーとして考えられるのか、考えられないのか」をある、なしで判断してほしいと伝えました。ないなら、次の候補者に声をかけていくつもりでした。

──お互いにブロックができるという点では、チームのタイプが世界のスタンダードだと思います。
石島:そうですね。ある程度は、頭にありました。チームのよさを出していくなら、訳が分からなくても(笑)ディグを上げに行きます。これでもインドア時代、ディグは半端なかったんですよ(笑)。でも、インドアのディグは駆け引きも含めて、砂の上でやるのは難しい。まだわかっていない部分もあるし、すぐには動けないですね。ディグとレセプションだったら、ディグのほうが得意だったし、ディフェンスに関しては自信がありました。それこそ上場よりは上手かったですよ(笑)、彼はオポジット(アタック専門のポジション)でしたから。上場はその頃に比べて、うまくなったと思いますよ。

──同じ年ということで以前から仲は良かったのですか?
石島:彼が FC東京にいた時にその存在を知りました。全日本でも一緒に試合に出ていた時もありましたし、同学年が少なかったので、そういう意味ではお互い思っていることをぱっと言える関係でした。今、上場は「気を使っている」と言っていますけど、ここまできてべらぼうにお互い遠慮して気を使っても仕方ないでしょうと。お互いの考えは言い合おうと決めています。アジアツアーの試合中も口論になることは一度や二度ではなかったです。けれど、2人の目的は勝つことなので、お互い支え合うことが大切。なんとか乗り越えてメダルを獲得することができました。

──最後に来シーズンについてお聞きします。石島選手がビーチに転向したての頃、まだ自分の現在位置が見えてこない、とおっしゃっていたのが印象的でした。今は、見えてきましたか?
石島:そうですね、転向し始めの頃は、女子高校生にも負けるくらいでしたから(笑)。転向1年目は、苦しんだシーズンでした。よく自分と比べられる越川は、1年目から結果を出してすごいなぁ、自分はステップできるのかなと思ってやっていました。だから2年目は結果を出したかった。紙にも目標を書き出して、今年はある程度、自分なりに結果を出すことにつながりました。次のステップは、勝ちにこだわります。世界で絶対にメダルをとるんだ、という強い想いを持ってやらないと。まだまだ自分の技術を伸ばせるところがたくさんあると思いますし。そこだけは見失わないように。ちゃんと踏みしめてやっていこうと思います。


石島雄介プロフィール

写真/平野敬久