ビーチバレーボール

【FOR BEGINNER’S COLUMN③ 】ビーチバレーボール世界王者の賞金総額は?

【FOR BEGINNER’S COLUMN③ 】ビーチバレーボール世界王者の賞金総額は?


「ジャパンビーチバレーボールツアー」
は9月にツアーファイナルを終え、国内のビーチはオフシーズンです。しかし、海外の
「FIVBワールドツアー」
は2018-2019シーズンが始まっています。このシーズンからは東京オリンピックの出場権を争うツアーポイントによるオリンピックランキングもスタートし、海岸に人の姿がまばらになる寒い季節になっても注目度は落ちることはありません。

4年に一度のビッグゲーム同様、重要なのはワールドツアーです。2018-2019シーズンは史上最多の世界52ヵ所で行われる予定であり、賞金総額は800万ドル(約9億円)となっています。この賞金は2017-2018シーズンからおよそ130万ドル(約1億5千万円)のアップ、2シーズン連続して増加しています。


2017-2018シーズン男子賞金王に輝いたノルウェーチーム

世界のマネーリーダーは?

ツアー自体の注目もそうですが、さて世界のトップチームはどのくらい稼いでいるのでしょうか。2017-2018シーズン、男子のマネーリーダーは、28万3500ドル(約3200万円)のAnders Mol/Christian Sørum組(ノルウェー)でした。ツアーポイントランキングでは6位でしたが、5スター(優勝賞金4万ドル(約450万円))のグシュタード(スイス)大会、ウィーン(オーストリア)大会で優勝。ハンブルク(ドイツ)で行われたツアーファイナルも制し15万ドル(約1,700万円)を得たことが初の賞金王奪取に貢献しました。

自らを「ビーチバレー・バイキングス」と呼ぶ彼らは、まだ21歳と23歳のヤングガンです。昨年、Molがトップルーキーに選ばれると、今年は一気にツアーチャンピオンまで駆け上がりました。この先どれだけ稼ぐことになるのか、末恐ろしいチームです。

ビーチバレーボールは、テニス、ゴルフやサッカーと異なり、男女間で優勝賞金や総額に差はありません。新しいスポーツでもあり、他の競技に比べ男女同権の考え方が進んでいると言えるでしょう。

その女子のマネーリーダーですが、25万8000ドル(約2,900万円)でAgatha Bednarczuk/Eduarda ‘Duda’ Lisboa組(ブラジル)でした。シーズン2勝でしたが、彼女らもツアーファイナルで勝ち15万ドルを手に入れたことが大きかったようです。Agathaは元世界チャンピオンでリオデジャネイロオリンピックの銀メダリストのベテランですが、Dudaはまだ20歳の新鋭。こちらも今後が期待される選手の1人です。

このようにワールドツアーに出場して獲得した賞金をどのように使うのかは、チームによって異なります。選手で2等分にするのか、契約しているコーチやトレーナーなどのスタッフに配当するのか、使い方はそれぞれでしょう。

生涯の獲得賞金額は?

ビーチは経験が重要視されるスポーツなので、競技人生も長いと考えられます。では、生涯獲得賞金も見てみましょう。男子のトップはレジェンドの1人Emanuel Rego(ブラジル)で、24シーズンプレーして256万ドル(約2億9000万円)、女子もブラジルの名選手、Larissa Francaで15シーズンで189万ドル(約2億1000万円)です。

注意したいのは、この賞金はFIVBワールドツアーのみです。アメリカの国内にはこれとは異なるAVP(Association of Volleyball Professional) ツアーがあります。プロスポーツとショービジネスの本場、アメリカですから最盛期は26大会、賞金総額500万ドル(約5億7000万円)のビッグツアーでした。

そのため国内だけでシーズン、40万ドル(約4500万円)以上稼ぐアメリカの選手もいました。それも加えると、伝説のプレーヤー、Karch Kiralyは320万ドル(約3億6000万円)、オリンピック3連覇のKerri Walsh Jenningsは259万ドル(約2億9000万円)を通算で獲得しています。

それから賞金以外で大きなものはスポンサー収入でしょう。ワールドツアーにはスマート、スウォッチなど世界的な大企業がパートナーになっており、スポーツへのスポンサードが積極的なレッドブルは、レッドブル・アスリートとして先ほどのDudaを始め16人の選手をサポートしています。

スポンサーにも様々なカタチがあり、広告媒体としての契約、アドバイザリーや成績に応じてボーナスが支払われる契約もあると聞きます。また、テクニカルスポンサーとしてボールやユニフォーム、練習器具などを提供したり、航空会社などが遠征費を負担するものもあります。


オリンピック3連覇のKerri Walsh Jennings(左)の通算賞金総額は?

活性化が期待されるワールドツアー&AVPツアー

そのスポンサーとの契約金ですが、なかなか公にはなりません。クリスチャーノ・ロナウド(サッカー)やロジャー・フェデラー(テニス)と同じとはいかないまでも、ビーチバレーボールも欧米では人気の高いスポーツであるため広告媒体としての価値は高いと考えられます。一説にはオリンピックチャンピオンや世界チャンピオンであると、年間40万ユーロ(約5100万円)程度の価値があるといった試算もあります。

ワールドツアーの賞金や契約金は、2007年の世界金融危機以前の水準に戻っています。アメリカのAVPツアーも事業を拡大しており、Kerri Walshは自ら新しいツアーを立ち上げました。これからもっとこの競技は活気づくと言っていいでしょう。

さらにこれまではベテラン勢がツアーを引っ張ってきましたが、前述のノルウェーの2人やDudaなど、10代からワールドツアーを回り20代前半でチャンピオンとなるヤングスターが台頭してきています。これもツアーの活性化、多くの資金が投入されるきっかけとなるでしょう。

日本からは、
石井美樹(湘南ベルマーレ)/村上めぐみ(オーイング)組
がツアーランキングでも上位につけ、
長谷川暁子(NTTコムウェア)/二見梓(東レエンジニアリング)組
も常時ワールドツアーを転戦しています。

2017年から始まった5スター制により、1、2スターなどツアーポイントがなくても海外勢とプレーし、ステップアップできる機会が増えました。これからワールドツアーで高額賞金を獲り、海外のスポンサーを得るような選手が日本から生まれてくる可能性もあります。ノルウェーのビーチバレー・バイキングスのようなチーム、期待したいですね。

参考文献/
Beach Volleyball Database

写真/FIVB
文/スポーツジャーナリスト 小崎仁久