ビーチバレーボール

短期決戦を制したのは、上場/永井組と鈴木/村上組。 「ジャパンツアー第6戦大洗大会」最終日。

短期決戦を制したのは、上場/永井組と鈴木/村上組。

「ジャパンツアー第6戦大洗大会」最終日。

台風一過。すっきりと晴れた青空が大洗サンビーチを包み込んだ。台風12号の影響で28日の試合が中止となった「ジャパンツアー2018第6戦大洗大会」。29日は、負けたら終わりの1dayトーナメント(プール戦なし)で行われることになった。予選は朝9時から28点1セットマッチでスタート。真夏の太陽光が降り注ぐ中、早くから集まった高校生はトップ選手の一挙手一投足に熱い視線を注いだ。

女子の決勝戦は、鈴木千代(クロス・ヘッド)/村上礼華(松山東雲女子大学)組と石坪聖野(athome)/柴麻美(帝国データバンク)組が対戦。速いバレーを得意とするチーム同士の好カードが実現した。

勝てばともに初優勝。先にペースをつかんだのが鈴木/村上組だ。サウスポーの鈴木が落ち着いてショットを決め、4連続得点で5−3とリードを奪う。石坪/柴組も速いバレーで応戦。石坪の巧みなツーアタック、柴のサービスエースなど技が光り、7−6と逆転に成功した。

勝負は僅差のまま終盤へ。鈴木/村上組が強打にショットを織り交ぜて変化を加えると、石坪/柴組もラリーで強さを見せて19−19の同点で追いつく。最後は21−19で鈴木/村上組が制したが、見応えのある攻防を展開した。

しかし、第2セットは打って変わって鈴木/村上組が序盤で大量リードを奪う。「いつもなら風が強くなると速いバレーができなくなるが、今日はちゃんとパストスを押さえられた」と村上。その理由を鈴木は、「ワールドツアーに出てくるチームは、サーブのスピードもパワーもレベルが高い。そうすると、パストスをまとめるのもものすごい技術が必要になる。その意味でいうと、ジャパンツアーはサーブが落ちるので、ワールドツアーに出ていた分、少し楽に感じる」と言う。

一時は2点差まで追い上げられたが、その後は1点ずつ取り合う展開が続く。鈴木が確実にサイドアウトを切り、20−15とマッチポイント。最後は村上が決めて、熱戦に終止符を打った。


初優勝に輝いた鈴木/村上組

初優勝の村上は「素直にうれしいです。試合もすごく楽しかった」と笑顔。一方、速いバレーが主流になる中、危機感を募らせているのが鈴木だ。「速いバレーはだんだん攻略されつつある。スタンダードなトスも打ち切れるように、個々の能力をもっと上げていきたい。そうすれば怖いものなしだと思います」

その速いバレーに対抗するのが、3位に入った浦田景子/田中麻衣(全日本空輸)組だ。これまで勝てない時期が続いたが、ようやく一つの壁を乗り越えた。
「決勝まで行けば4試合を戦うことになったが、その準備はできていた。大きな山だった準々決勝に勝つことができてホッとしています」と田中。

浦田は速いバレーの攻略の糸口を見つけつつあると言う。
「(昨年は鈴木と組んで)あの速いバレーを一年を通してやってきました。その分、本当に難しいバレーをやっているということは知っています。弱い部分も知っているはずなのに、なかなか崩せない。でも、シーズンの後半は、ベーシックなバレーをするチームが勝つんじゃないかと思っています」。準決勝の後にこう振り返った浦田。ファイナル進出に向けて一戦一戦が大事になる中、残り3戦でのレベルアップにさらなる期待がかかる。

短期決戦でチャンスをものにしたのが、上場雄也(松戸レガロ)/永井雄太(松戸レガロ)組だ。初戦で平良伸晃(D-FORUM)/越川優(横浜メディカルグループ)に勝って勢いをつかむと、準決勝でも西村晃一(WINDS)/道木優輝に快勝した。

今大会、男子の多くがペアをシャッフル。早々に姿を消すチームもある中、上場/永井組にとってはプラスに働いた。「同じチームで一緒に練習をしてきたので、チーム力は一番あったと思います」と永井。「FIVBワールドツアー東京大会」の疲労を感じさせない戦いぶりを見せた。

決勝戦は庄司憲右(愛媛県競技力向上対策本部/湘南ベルマーレ)/池田隼平組と対戦。第1セットを21−14で圧倒すると、続く第2セットも上場がブロックでリズムをつかむ。要所で永井が強打をたたき込んだ。「普通の公務員」という永井は、182.5cmと上背こそないが、思い切りのいいプレーで会場を沸かせた。

終盤に入っても、勢いは衰えない。永井のブロックで18−15とすると、上場のブロックなどで4連続得点。会心の試合運びを見せ、大会を通して1セットも落とすことなく優勝した。


ワールドツアーと同時期に開催された大洗大会

2人がペアを組むのは、2016年の「ジャパンツアーファイナルグランフロント大阪大会」を含め3回目。普段から一緒に練習する機会も多い2人だが、上場は永井について「(ファイナルに出た)2年前に比べるとうまくなった。競技性の理解も高まったし、もともとボールコントロールもうまい。荒れないところが、すごく強みだと思います」と高く評価する。

永井も「トップの選手に比べたら練習量は少ないかもしれないけど、そこであきらめるのではなくて、自分が持っているパフォーマンスをしっかり出していくことが大事。負けず嫌いなので、一般人だろうがプロだろうが、同じ土俵に立ったら関係ない。しっかり自分を出していきたいと思います」と今後に向けて意気込みを語った。

一方、負けた庄司/池田組は、池田が準決勝で足をつるなど疲労困憊。それでも決勝戦までの短い時間でリカバリーするなどタフさを見せた。


3位入賞した但野

男子の3位には、島袋/但野瑠勇(東輝建設/KLB)組と西村/道木組が入った。光ったのが、大学を卒業したばかりの但野だ。
予選からの戦いとなったが、破壊力のある強打を武器に得点を量産。トーナメント1回戦では白鳥勝浩(トヨタ自動車)/島田桃大(CTカンガッソ)組に真っ向勝負の打ち合いを演じ、フルセットの勝利をもぎ取った。

「試合中にカッカしてしまい、自分のプレーができなくなって、島袋さんにたくさん迷惑をかけてしまいました。試合の後半は修正が効かなかったので、今後はそこを修正したい。そうすれば、もっと勝てると思います」。準決勝で敗れ、こう振り返った但野。将来性の高さを示す大会となった。

今大会は2019年に開催される「いきいき茨城ゆめ国体」のリハーサル大会として実施。地元から来たたくさんの高校生が運営に携わった。男子の3位に入った島袋康隆(海鮮料理島)は、「今日はこれだけたくさんの高校生がスタッフとして来てくれた。いいプレーを目の当たりにし、それが国体につながればいいことだと思う。いろんな人に興味を持ってほしい」と話した。

次回のジャパンツアーは、8月4日(土)、5日(日)に開催される「ジャパンツアー2018第7戦若狭おばま大会」。そして、8月10日から3日間にわたって行われる「第32回ビーチバレージャパン」で夏のチャンピオンが決定する。