ジャパンツアー 第10戦 グランドスラム 横浜赤レンガ倉庫大会2日目 女子は橋本選手が引退試合を有終の美で飾る 男子は東京2020オリンピック金メダリストを兄に持つMol兄弟が優勝
津商業高校3年時にキャプテンを務め、春高バレーで3回戦まで勝ち上がる原動力となった橋本選手は、卒業後にVプレミアリーグ(現SVリーグ)のデンソーエアリービーズに入団。4年間プレーしたあとビーチに転向しましたが、そこには「オリンピックに出場するという夢を叶えるため」という明確な目標がありました。橋本選手がそこまでオリンピックに強い思いを持っているのは、ハンドボールでオリンピックに出場経験のある父の影響もあるといいます。そうしてビーチに打ち込むこと7年間、夢に手が届くことなく現役を引退することになり、「満足はしていません」と橋本選手。しかし同時に「でも、自分の競技人生に納得はしています」と口にしました。
「プレーヤーとして真剣勝負ができなくなるというのは、すごく名残惜しいです」と臨んだ決勝戦では、持ち味であるブロック、高い打点からの角度のある打ち込みなどを存分に発揮し、その胸には「コーチだけでなく関係者、家族、ファンの方々とみんなに背中を押してもらい支えてもらった競技人生、感謝してもしきれません。最後にこうして私のプレーを披露できたことも恵まれていると思います」と、感謝の気持ちがありました。
この3年間、橋本選手とペアを組んできた村上選手は、表彰式後に行われた橋本選手の引退セレモニーで「すずさん(橋本選手)は、頼りになるお姉ちゃんのような存在でした。3年間は楽しいことだけではなく、全然勝てない時期、一緒に練習できない時期もありました。でも、すずさんはいつも前向きで『今よりもっと成長できるから』と声をかけ続けてくれました。すずさんと一緒にいたことで、選手としてだけでなく人としても成長したと思います。最後まですずさんと戦えて、最後に勝つことができてよかったです。3年間ペアを組んでくださってありがとうございました」という言葉で橋本選手をねぎらっていました。
橋本選手は今後について、「人生の中で、次のキャリアに向かうタイミングだと思っています。競技をしながら大学院に行っていたので、そこで学んだことを生かした仕事をしていきたいと思っています」と言います。一方の村上選手は「次のオリンピックを目指します」と、橋本選手のぶんまで夢を追いかけます。
その女子決勝戦の前に行われた男子決勝戦で、西村晃一(WINDS)/Martin Kaufer(ドイツ)組を下したのは、今回が初来日となった兄弟ペア、Markus Mol/Adrian Mol(ともにノルウェー)組です。このMol兄弟にはビーチバレーをしている兄がいるのですが、その人こそ東京2020オリンピックで金メダル、パリ2024オリンピックで銅メダルを獲得したAnders Mol選手。2人は兄Anders選手のことを「あまりに強すぎる。兄弟だからよく比べられるので追いつきたいけれど追いつけない」と評しています。
しかし、それは謙遜もあるのでしょう。実際、22歳のMarkus選手が左利きから繰り出すスパイクはタイミングが早くて角度もあり、今大会で対戦した相手は対応できていませんでした。また、20歳のAdrian選手はフィジカルの強さを生かしたパンチ力のあるスパイクが武器ですが、トスが流れたときは左手でオープンスペースにショットを落とす小技も持ちあわせています。そしてMarkus選手は弟のことを「常に高いエナジーで、ベストを尽くして戦おうという姿勢がある」、Adrian選手は兄のことを「とてもスマートなプレーヤーで、どういう風に戦えばいいかを教えてくれる」と、お互いに認め合っています。数年後、この2人も兄Anders選手のように世界のトップで戦っているかもしれません。