ジャパンツアー 第7戦 グランドスラム お台場大会1日目 オリンピック出場3回「ビーチのレジェンド」白鳥勝浩選手が競技生活に幕を下ろす
大会2日前は雨になる天気予報でしたが、当日は雨雲が太平洋側に南下。太陽が雲の隙間から顔を出し、東京湾からは心地よい風が吹くという絶好のビーチバレー日和のなかスタートしたジャパンビーチバレーボールツアー2024第7戦グランドスラムお台場大会。ジャパンツアーがお台場海浜公園で行われるのは2018年以来6年ぶりとなりました。
この大会を最後に25年のビーチバレー競技歴に終止符を打ったのが白鳥勝浩(株式会社カブト)選手です。「ビーチのレジェンド」とも呼ばれる白鳥選手(1976年10月29日生まれ)は、東亜学園高校時代に春高で準優勝、東海大学時代にはインカレで準優勝。「本当はインドアで日本代表になりたかったのですが、無理そうだったのでビーチバレーでオリンピックに行ってやろうと思いました」と東海大学卒業後はビーチに専念し、その夢を実現しオリンピックには3度出場(北京2008=9位/ペア朝日健太郎選手、ロンドン2012=19位/ペア朝日健太郎選手、東京2020=19位/ペア石島雄介選手)。これは男女を通じて日本人最多で、またその年の日本№1を決めるビーチバレージャパンでは2002年からの10連覇を含め通算12回の優勝、そして国内ツアー50勝を誇るなど「レジェンド」の名にふさわしい実績を積み上げてきました。
その白鳥選手の最後の試合のパートナーとなったのは、永井雄太(松戸レガロ)選手です。永井選手のことを白鳥選手は「昨季、パートナーの募集をかけたときに真っ先に手を挙げてくれたのが永井君。人間味あふれていて、プレーでは泥臭さのある彼とのペアが最後にもってこいかなと」と評しています。そして対戦相手は、上場雄也(松戸レガロ)/長谷川徳海(ハウスコム株式会社)組。白鳥選手はかつてこの2人ともペアを組んだことがあります。
試合では、白鳥選手が、ディグからのスパイク、意表を突いたツーアタック、ブロッカーの後ろにふわりと落とすポーキーショットと多彩な技を見せ会場に詰めかけた観客を沸かせました。また永井選手もサービスエース、モンスターブロック、気合のこもったハードヒットで得点を重ねましたが、今季2勝を挙げている上場/長谷川組に要所を絞められ、第1セット、第2セットともに17‐21で敗退となりました。
試合後に白鳥選手の引退セレモニーが行われましたが、その司会進行を務めたのが白鳥選手とのペアで2度オリンピックに出場し、現在は参議院議員の朝日健太郎氏です。大会に出場している選手による白鳥選手の胴上げの提案をしただけでなく、会場のお客さんに呼びかけて、選手、関係者、観客を含めた集合写真を撮る段取りを行うなど、湿っぽくなりがちなセレモニーを盛り上げることで、盟友である白鳥選手を笑顔で送り出しました。
25年の競技人生を「ビーチバレーの選手として、もうやれることはないというくらい幸せでした。これ以上望むものはありません」と振り返った白鳥選手。この第7戦GSお台場大会を最後と決めたのは、「僕の地元の東京での大会ということ。一緒に戦った朝日健太郎が引退した場所であるということ(2012年第6戦ペボニアカップ)。東京オリンピックの会場(お台場海浜公園に隣接する潮風公園)も近くだったことなど、ビーチバレーの歴史がある場所で終わりたかった」というのが理由です。また、「今季の第3戦GSグランフロント大阪大会で優勝できたことが現役引退を決意する後押しになりました。『これで本当に思い残す越すことはなにもないな』と」とも語ってくれました。
「ビーチバレーが楽しくて仕方なくて、大好きで仕方なくて、それだけでやってきました。これまで何度もビーチバレーの魅力を聞かれてましたが、その度に答えが違うんです。それだけビーチバレーにはいろいろな魅力があるということだと思います。それをずっと探し続けていたら、この年になってしまいました(笑)。今、現時点で思うのは、2人だけでやる人間味のある競技ということです」と言う白鳥選手。特に思い出に残っていることを尋ねると、「自国開催の東京2020オリンピックも、ロンドン2012オリンピックも思い出に残っていますが、強いて一つに絞るのであれば北京2008オリンピックです。オリンピックを目指し始めて約10年で出場権を掴んだこと、また世界ランキングで行けたこともうれしかったです」と答えてくれました。
「今後は、指導者としてビーチバレーの魅力を伝え続けていきたいと思っています。ビーチバレーは2人がボール1球を持って砂浜に行けばできるスポーツ。ビーチバレーをまだ知らない人にも、最初は砂と戯れるところから楽しんでもらって、そこから僕のようにオリンピックを目指す選手が出てきてほしいと思っています。そのサポートをするほうに回ります」と白鳥選手。すでに今季から白鳥選手のコーチングを受けている女子の伊藤桜(日本通運株式会社)選手は、白鳥選手のことを「ビーチバレーに対しての熱量、考え方、向き合い方は、私が今まで関わってきた方の中でナンバーワンです。白鳥コーチと一緒に目標を明確にして、それに向かって一緒に頑張っています。ずっと付いていきたいコーチです」と絶大な信頼を寄せています。「ビーチのレジェンド」はコーチとなってもレジェンドとして、日本ビーチバレーボール界をけん引してくれることでしょう。