ビーチバレーボール代表

山本女子ヘッドコーチが語る ビーチバレーボール女子日本代表候補6人の可能性

山本女子ヘッドコーチが語る ビーチバレーボール女子日本代表候補6人の可能性

男子同様、7月26日に開幕するパリ2024オリンピックの出場枠を確保するには、6月21日から行われるコンチネンタルカップ優勝が必要な女子。今回、日本代表に選ばれた6選手の特徴を山本知寿女子ヘッドコーチに聞いた。

 

それぞれ独自の個性&武器を持った6選手

 

今回、長谷川暁子(38歳)、石井美樹(34歳)、橋本涼加(30歳)、村上礼華(27歳)、柴麻美(28歳)、丸山紗季(32歳)の6選手を女子日本代表に選出しました。

 

長谷川は、日本の女子選手の中で総合的に高いスキルを持っていて、それはアナリストが分析したサーブ、スパイク、ブロック、レシーブなどをチャートにしたものからも証明されています。またインドア時代にVリーグのNECレッドロケッツに所属していましたしバレー経験が豊富で、チームメイトを引っ張る内面的な部分でも素晴らしいものがあります。現在、国内NO.1プレーヤーと言ってもいいかもしれません。

 

石井も長谷川同様、基礎技術が高く、特にサーブでの得点力の高さが魅力です。長谷川とペアを組むことで、ミスが少ない、確実性の高いチームになっています。パフォーマンスに波がないため、勝てるところにはしっかり勝つという計算ができるのも頼もしいです。現在の世界の主流はサーブ&ブロックですが、長谷川/石井ペアはサーブ&ディフェンスが生命線のチーム。サーブで崩し、ディグして、得点していくというパターンで、ランキング上位にも勝利し結果で証明しています。

 

橋本は身長が182㎝と高く、これまで日本が苦しんできた高さの部分で状況を変えられるポテンシャルを持っています。ブロックの高さが大きな魅力ですが、パートナーとのコミュニケーション能力、そして相手を観察する能力が高い点も持ち味で、試合中コーチからの指示が出せないビーチバレーではそこが勝敗を左右したりします。最近、その良さが試合の中で出せるようになってきて、得点確立の高い戦術をとれるようになってきました。

 

その橋本とペアを組む村上の最大の武器は、サーブのバリエーションの多さです。ドライブサーブ、フローターサーブ、シュート回転のサーブと多種類を打ち分けることができ、コントロールできる幅もかなり広い。また攻撃に関しても、ボールの右や左を打ってカーブやシュートをかけたりと正攻法ではない攻めで相手に的を絞らせないという特徴があります。ミスをするリスクもありますが、彼女独自のものなので伸ばしていってほしいです。

 

橋本/村上ペアは、村上がサーブで崩し、橋本がブロックで仕留めるというのがベストのパターン。サーブとブロックで得点するので勢いに乗りやすく『ランキング上位にも勝てる』という希望を持たせてくれるアグレッシブなチームです。逆にサーブレシーブから連続失点することがあるので、そこの安定感、確実性が出てくれば、もっと強いチームになっていくはずです。

 

柴は、上背はないものの(165㎝)、スパイクにはパンチ力があり、またビーチのスキルも高いものを持っています。特に機動力とコンビネーションが優れており、通常コートの真ん中でレシーブしたら、真ん中でトスをもらってスパイクを打つことが多いなか、柴は後ろへ回って打ったり、アンテナの方に行ってみたりと相手に的を絞らせない動きをします。また、ツーやワンで返すことも多く、人とは違ったプレーをする意外性があります。

 

丸山は、インドアからビーチに転向してきてまだ2年少しのためビーチのスキルという点ではこれからの部分もありますが、体の強さが持ち味です。反応スピードも速いので、海外選手の強くて速いボールをディグする能力もあります。昨季のジャパンツアーでは、柴とのペアで後半2回優勝していますが、ビーチ特有のボールタッチ、弱いボールの処理、などに順応してきたことが要因だと思います。その意味では、まだまだ伸びしろがある選手です。

 

世界のトレンドは背の高いブロッカー

 

かつての女子は『どれだけボールを拾えるか』というディフェンスができるチームが強かったのですが、今は男子同様、高身長のブロッカーがいるチームが世界ランキング上位を占めています。190㎝前後のブロッカーが前にいて、後ろのレシーバーはそれほど身長がなくてもディフェンスがうまい、というペアが多くなっています。

 

ビーチバレー大国のブラジルでは、ブロッカーとしての基準を決めていて、それより身長が低い場合はいくらうまくても強化選手にしないということをしています。また、前回のコンチネンタルカップで優勝した中国には188㎝の左利きのブロッカーがいました。それほどキャリアはなかった選手ですが、ベテランのレシーバーと組んだことで結果を残しています。ニュージーランドが最近強いのは、アメリカの大学に留学してで鍛えられた身長のあるブロッカーがいるからですし、タイには195㎝の選手がいます。この選手は15~16歳のときに見出された選手で、当時は全くの初心者だったのですが、今では世界ランキングで日本人選手より上にいます。1人サイズが大きい選手がいると、強化が一気に進むというのが今の世界のトレンドです。

 

そうした身長という面では、日本は人材的に遅れを取っています。それでもペアが2人ともズバ抜けたスキルを持っていれば対抗できるかもしれませんが、そのレベルには達していません。どちらを求めるのかというと、やはり世界の主流である高さに合わせる必要があるのではと思っています。今後も、190㎝ぐらいの選手がビーチに出てくれるような仕組み作りが大事になってきます。