【FOR BEGINNER’S COLUMN② 】 ビーチバレーボールの『ペア』はどうやって決めるの? <前編>
ビーチバレーボールは個人スポーツに最も近いチームスポーツ、チームスポーツに最も近い個人スポーツと言われます。
2人でペアを組み、行うスポーツはたくさんありますが、テニスやバドミントン、卓球など同じネットスポーツはシングルスが基本にあり、ダブルスが存在します。しかしビーチバレーボールは1人ではできません。
それにテニスなどでは、極端な話をするとチームのうちの1人が攻撃も守備もすべて担い、試合を決めてしまうことも可能です。ですが、バレーボールはそこまで1人の力量だけでプレーすることは難しい競技です。それはテニスなどとは大きく異なるルール、3タッチ以内で相手コートにボールを返す、というものに依るところでしょう。
特にビーチバレーボールの場合は自分が触れたボールを次に触るのは、自分のチームメイトです(3タッチ目を除くと)。より優しく、次のプレーがしやすいボールをパスしないと、相手への攻撃自体が上手くいかなくなります。つまり他のネットスポーツのダブルスよりも、ビーチバレーボールはもっとチームメイトの技量や考え方への理解力、親密度が求められると言えるのではないでしょうか。
1人の力では勝てないのがビーチバレーボール
そこで疑問がふつふつと湧いてきます。ペアはどうやって決めるのでしょう?
相手のどこを見て選ぶのでしょうか? スキル? 経験値? メンタリティ? 人間性?
どんなプレーもこなさないといけないビーチバレーボールにも基本的なポジションはあり、『ブロッカー』と『レシーバー』に分けられます。ブロッカーはネットに付いてブロックを専門に行う人、レシーバーは、その後ろでレシーブを行う人です。一般的にブロッカーは身長が高い選手が多く、レシーバーはその逆です。
「オファーする側」「オファーされる側」
ビーチバレーボールのペアは、「ペアを組みたい人」を自らの意志で決めてオファーをかけるのが一般的ですが、背の高さを基準にすると、レシーバーはペアの相手が限られてきます。結果としてレシーバーは「オファーする側」、ブロッカーは「オファーされる側」という立場になることが多くなります。
身長の高い選手は、相手として身長の高い選手も低い選手も選ぶことができますが、身長の低い選手はより高いステージでプレーするには、どうしても身長の高い選手と組まざるを得ません。
ただ、バレーボールには高さが必要なことは間違いないですが、それがすべてではありません。また、ビーチバレーボールは戦術や駆け引きなど頭を使う部分が大きい競技。インドアほど体格的な優劣が実力や結果に影響を与えません(事実、ブラジルの元女子世界チャンピオン、ラリッサ(174cm)・ジュリアナ(178cm)組のように、高さがなくとも成功するチームは世界のトップでも存在します)。
レシーバーでもブロッカーでも実力のある選手は「オファーされる側」になり、ペアを選ぶことが出来るのです。
目標や結果にズレが生じると解散の時!?
では、現役のレシーバーはペアを決める際、どういったことを考えているのでしょうか? 日本代表強化指定選手でジャパンツアーランキングのトップを走るレシーバー高橋巧選手は「海外で戦っていくために、やはりブロックの高さや堅さのあるブロッカーを求めます」と言います。
一般的に背の低いレシーバーが対戦相手からサーブで狙われることが多く、レシーバーが上げたボールはブロッカーがトスすることになります。ですからブロッカーはトスの能力も必要になってきますが、高橋選手は「トスの安定性よりもブロック力を今は重視しています」と話します。トスについてはチームを作っていく中で力が上がっていくもので、ある程度自分でもカバーしようと考えていると言います。
日本女子のトップランカーでナンバーワンレシーバーの村上めぐみ選手は、逆に考えています。「ブロックも重要ですが、チームの攻撃力を考えた場合、ペアにはトスの能力も求めたいです」と言います。また「目標達成に必要なものを持っている人と組みたい」とも。しかしペアの相手に高い能力を求める以上に、その選手の持っている力を引き出すために、自らが合わせていくことが大切だと、村上選手は話しています。
スピードと読みが武器のレシーバー・清水啓輔選手もトスを重要視しています。「よいブロッカーで経験のある人、そしてトスの上手い選手」とパートナーに求める能力を話します。
勝負の時に決められる力を求めているという西村晃一(右)
ただ、それだけではないと言います。「身長、技術力も大切ですが、同じ目標を目指しているか、これが一番です」これは前述した選手すべてが、同じことを口にしています。当たり前の話ですが、チームスポーツですので、バラバラな目標では結果は伴わないですし、目標や結果にズレが生じてくるとチームは解散の時。そのため、頻繁にペアが変わるチームも出てくるのです。
このように目に見えない部分も大切なことでしょう。高橋選手は「意識の高さ、勝ちに貪欲であるか」もほしい条件に挙げます。また、45歳を超えてもなお、トップレベルのレシーバーであり続ける西村晃一選手は求めるペアについてこう話します。「持っているか、持っていないか。ココという大事な場面、大勝負の時に決められる何かを持っているか」と──。
組む相手が限られてしまうことの多いレシーバーにとっても、ペアにはフィジカルや技量以上に、考え方、メンタリティ、そしてサムシングが重要であるということのようです。
次回の後編では、「オファーされる側」にいるトップ選手たちの考えについて紹介していきたいと思います。
文/スポーツジャーナリスト・小崎仁久
ビーチバレーボールのペアは、「ペアを組みたい人」を自らの意志で決めてオファーをかけるのが一般的ですが、背の高さを基準にすると、レシーバーはペアの相手が限られてきます。結果としてレシーバーは「オファーする側」、ブロッカーは「オファーされる側」という立場になることが多くなります。
身長の高い選手は、相手として身長の高い選手も低い選手も選ぶことができますが、身長の低い選手はより高いステージでプレーするには、どうしても身長の高い選手と組まざるを得ません。
ただ、バレーボールには高さが必要なことは間違いないですが、それがすべてではありません。また、ビーチバレーボールは戦術や駆け引きなど頭を使う部分が大きい競技。インドアほど体格的な優劣が実力や結果に影響を与えません(事実、ブラジルの元女子世界チャンピオン、ラリッサ(174cm)・ジュリアナ(178cm)組のように、高さがなくとも成功するチームは世界のトップでも存在します)。
レシーバーでもブロッカーでも実力のある選手は「オファーされる側」になり、ペアを選ぶことが出来るのです。
では、現役のレシーバーはペアを決める際、どういったことを考えているのでしょうか? 日本代表強化指定選手でジャパンツアーランキングのトップを走るレシーバー高橋巧選手は「海外で戦っていくために、やはりブロックの高さや堅さのあるブロッカーを求めます」と言います。
一般的に背の低いレシーバーが対戦相手からサーブで狙われることが多く、レシーバーが上げたボールはブロッカーがトスすることになります。ですからブロッカーはトスの能力も必要になってきますが、高橋選手は「トスの安定性よりもブロック力を今は重視しています」と話します。トスについてはチームを作っていく中で力が上がっていくもので、ある程度自分でもカバーしようと考えていると言います。
日本女子のトップランカーでナンバーワンレシーバーの村上めぐみ選手は、逆に考えています。「ブロックも重要ですが、チームの攻撃力を考えた場合、ペアにはトスの能力も求めたいです」と言います。また「目標達成に必要なものを持っている人と組みたい」とも。しかしペアの相手に高い能力を求める以上に、その選手の持っている力を引き出すために、自らが合わせていくことが大切だと、村上選手は話しています。
スピードと読みが武器のレシーバー・清水啓輔選手もトスを重要視しています。「よいブロッカーで経験のある人、そしてトスの上手い選手」とパートナーに求める能力を話します。
勝負の時に決められる力を求めているという西村晃一(右)
ただ、それだけではないと言います。「身長、技術力も大切ですが、同じ目標を目指しているか、これが一番です」これは前述した選手すべてが、同じことを口にしています。当たり前の話ですが、チームスポーツですので、バラバラな目標では結果は伴わないですし、目標や結果にズレが生じてくるとチームは解散の時。そのため、頻繁にペアが変わるチームも出てくるのです。
このように目に見えない部分も大切なことでしょう。高橋選手は「意識の高さ、勝ちに貪欲であるか」もほしい条件に挙げます。また、45歳を超えてもなお、トップレベルのレシーバーであり続ける西村晃一選手は求めるペアについてこう話します。「持っているか、持っていないか。ココという大事な場面、大勝負の時に決められる何かを持っているか」と──。
組む相手が限られてしまうことの多いレシーバーにとっても、ペアにはフィジカルや技量以上に、考え方、メンタリティ、そしてサムシングが重要であるということのようです。
次回の後編では、「オファーされる側」にいるトップ選手たちの考えについて紹介していきたいと思います。
文/スポーツジャーナリスト・小崎仁久